高齢者の転倒は、骨折や入院、その後の生活の質に大きく影響することがあります。
実際、高齢者の転倒事故の多くは「外」ではなく「家の中」で起きているといわれています。
この記事では、高齢の家族と暮らしている方・これから在宅介護を考えている方に向けて、今日から無理なく取り入れられる「室内での転倒予防対策」を、できるだけやさしく解説します。
専門知識がなくても実践できる工夫を中心にまとめていますので、「何から始めればいいかわからない」という方も安心して読み進めてください。
高齢者の転倒はなぜ室内で多いのか?
まず知っておきたいのは、高齢者の転倒の多くが自宅内で起こっているという点です。
主な理由を見ていきましょう。
家の中の動線にモノが多い
新聞、洗濯物、段ボール、延長コード…
つい置きっぱなしにしてしまうモノが、つまずきの原因になりやすい場所に散らばっています。


毎日見る景色に慣れてしまい、「危ない」と感じにくくなることも一因です。
段差や敷居に気づきにくい
視力低下や注意力の低下によって、家の中の小さな段差や敷居に気づけないことがあります。
特に夜間や薄暗い場所では、段差に気づかず転倒するケースが多いとされています。
視力・筋力・バランス能力の低下
年齢とともに、筋力・視力・バランスが少しずつ低下します。
立ち上がりや方向転換など、日常の何気ない動作でも転びやすくなることがあります。
夜間の移動が危険になりやすい
夜中のトイレ移動は、暗さ・寝起きのふらつきが重なり、特に転倒リスクが高くなる時間帯です。

まず確認したい!高齢者がつまずきやすい室内の危険ポイント
転倒を防ぐには、まずは「危ない場所」を知ることから始めましょう。
ベッド周囲(足元のコード・マット類)
ベッドから起き上がってすぐの場所は、転倒が起こりやすい“危険ゾーン”です。
照明のスイッチ、携帯の充電コード、マットのめくれなどが原因になることがあります。

廊下・居間の物の散乱
よく通る場所にモノが置かれていると、それだけで転倒リスクが上がります。
雑誌、洗濯物、コード類は整理の優先ポイントです。
トイレ・脱衣所・浴室の滑りやすさ
床が濡れる・冷えている・湿っていることが多く、滑りやすい場所です。
浴室や脱衣所の環境見直しは命に関わる事故を防ぐために重要とされています。

玄関の段差や踏み台
靴を脱ぎ履きする体勢は不安定で、段差が高いとつまずく原因になります。

照明が暗い場所(特に夜間動線)
暗い・影ができる場所は、段差や物に気づきづらくなります。
夜間のトイレは特に危険です。
今日からできる!高齢者の室内転倒を減らす7つの対策
ここからは、今日からすぐに取り入れられる転倒防止策を紹介します。
① 歩く通り道を片づけて動線を確保する
一番効果が大きい対策が「片づけ」です。
ベッド〜トイレ、居間〜キッチンなど、毎日よく通る道の物をすべて取り除きましょう。
ポイント
- 足元に物を置かない
- 延長コードは壁側にまとめる
- 廊下は常に“何もない状態”を保つ

動線がスッキリすると、それだけで転倒リスクが大幅に下がります。
② 室内を明るくして段差や障害物を見やすくする
薄暗さは転倒の大きな原因です。
対策例
- 廊下・トイレに人感センサーライトを設置
- 寝室に足元ライトをつける
- 電球を明るめのLEDに交換
- 日中はカーテンを開けて自然光を取り入れる

特に夜間は、天井の照明をつけるよりも
足元だけをやさしく照らす照明の方が、
目が覚めすぎず、安心して歩けるケースも多く見られます。
ケアマネとして関わるご家庭でも、
廊下やトイレまでの動線に
人の動きを感知して自動で点くライトを取り入れている方が増えています。
もちろん必ず必要なものではありませんが、
「暗闇で手探りになる時間」を減らすだけでも、転倒への不安が軽くなることがあります。
③ じゅうたん・マットの見直し(滑り止め対策)・
じゅうたんやマットは、端がめくれたり滑ったりして危険です。
こんな場合は要注意:
- マットの角が浮いている
- 滑り止めがついていない
- 足が引っかかる感覚がある

対策として、思い切ってマット類を減らすのも効果的です。
どうしてもマットを使いたい場合は、
滑り止めがしっかり効いているものや、ズレにくい構造のものを選ぶことが大切です。
実際、
「何度も足が引っかかっていたマットを変えただけで、つまずかなくなった」というケースも少なくありません。
④ 段差には踏み台やスロープで“転ばない工夫”を
完全に段差をなくすことは難しくても、工夫次第で「安全な段差」に変えられます。
例:
- 玄関に踏み台を設置
- 敷居の段差にスロープを置く
- 段差部分に明るいテープを貼って見やすくする

特に玄関は事故が多いので重点的に対応しましょう。
⑤ 手すりを設置して安全に移動できる環境づくり
手すりは転倒予防の“最強アイテム”です。
おすすめ設置場所:
- 玄関
- トイレ
- 廊下
- 浴室・脱衣所
- ベッド横

介護保険の「住宅改修」を使えば、自己負担1〜3割で設置できます。
⑥ 浴室・トイレの滑りやすい場所に専用対策を施す
浴室は転倒だけでなく、頭部外傷・骨折・溺水のリスクもあるため、しっかり対策したい場所です。
すぐできること
- 滑り止めマットを敷く
- 浴槽の縁に手すりを取りつける
- 脱衣所の床も滑り止めシートで補強
- 脱衣所と浴室の温度差を少なくしヒートショックを予防

特に浴室用の滑り止めマットは、
工事をしなくてもすぐ取り入れられる対策として多くのご家庭で活用されています。
「まずはできることから始めたい」という方には、比較的取り入れやすい方法のひとつです。
⑦ 筋力・バランスを維持するための簡単な体操を取り入れる
環境を整えるだけでなく、体の機能を維持することも大切です。
家の中でできる簡単な体操:
- 椅子に座って膝を上げ下げする
- つま先を上げるトレーニング(つまずき防止に効果大)
- かかと上げ運動
- ゆっくり深呼吸+軽いストレッチ

無理ない範囲で続けると、転倒しにくい体づくりにつながります。
介護保険で利用できる転倒予防のサービス・福祉用具
介護保険を利用すると、転倒予防に役立つサービスや用具が安く使えます。
住宅改修(手すり・段差解消・滑り止めなど)
手すり設置や段差解消など、最大20万円までの工事費に介護保険が使えます。
自己負担は1〜3割で済むため、非常に利用価値が高い制度です。

福祉用具レンタル
介護保険でレンタルできる福祉用具には、転倒予防に役立つものが多いです。
例:
- 歩行器
- 手すり(据え置き型)
- ベッド周りのサイドレール
- スロープ


レンタルなら、必要な時だけ借りて、使わなくなったら返却できるのがメリットです。
理学療法士による訪問リハビリも効果的
訪問リハビリでは、転倒しやすい歩き方・立ち上がり方の癖を見てもらえます。
その人に合ったトレーニングを教えてもらえるため、効果が出やすいサービスです。
転倒を防ぐために家族ができること
環境を整えるのは大切ですが、日常のサポートも重要です。
日々の見守りと環境チェック
“危ない置きっぱなし”をそのままにせず、気づいたらすぐ片づける習慣を。
無理のない体操や散歩の習慣づけ
短時間でも体を動かすことで、転倒しにくい体づくりにつながります。

急なふらつきや体調変化の早めの相談
薬の副作用や脱水が原因になることも。
気になるときは早めに医師やケアマネに相談しましょう。
まとめ|小さな工夫で転倒は大きく防げる
高齢者の転倒は、家族が少し工夫するだけで大幅に減らせます。
片づける・明るくする・滑らせない・支える場所を作る。
この4つを意識するだけで、日常の安全度は大きく上がります。
ご家族が安心して暮らせるよう、できるところから取り入れてみてください。

本記事は一般的な情報提供を目的としています。
介護サービスの利用や制度の適用については、
お住まいの自治体や担当の専門職へご相談ください。


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