「もう仕事を続けながらは無理かもしれない」——介護の負担が重くなってくると、多くの方がこの言葉を一度は口にします。ケアマネジャーとして20年、そうやって仕事を辞める決断をされたご家族をたくさん見てきました。ただ、その決断が本当に「唯一の選択肢」だったのか、後になって振り返ると、他にも道があったと感じるケースも少なくありません。今回は、介護離職という大きな決断をする前に知っておいてほしい制度と、施設入所も含めた判断基準について、現場の視点からお話しします。
介護離職を考える前に、知っておきたい制度

まず知っておきたいのが「介護休業制度」です。対象家族1人につき通算93日を上限に、3回まで分割して取得できます。休業中は雇用保険から「介護休業給付金」が支給され、金額は賃金日額の67%が目安です(会社から一部賃金が支払われる場合は調整されます)。対象になるのは配偶者・父母・子・祖父母など、常時介護を必要とする家族です。
これとは別に、年5日(対象家族が2人以上なら年10日)取得できる「介護休暇」もあり、通院の付き添いなど短時間の対応に使いやすい制度です。
93日という日数は「介護をし続けるための期間」ではなく、「今後の体制を整えるための期間」として設計されています。この93日の使い道として、在宅サービスの手配だけでなく、施設入所の検討・申し込み・見学に充てるという発想を持っておくと、離職という選択に急がずに済むケースがあります。
「辞める」以外の選択肢を整理する
離職を考える前に、次の選択肢をどこまで使い切っているか、一度整理してみてください。
- 訪問介護・デイサービス・ショートステイを組み合わせて、在宅での負担を減らせないか
- ケアマネジャーに相談し、ケアプランそのものを見直せないか(サービスの回数や種類は状況に応じて変更できます)
- 施設入所(特養・老健・有料老人ホームなど)を選択肢として検討できないか
特に3つ目は、「施設に入れるのは親不孝」という気持ちから、選択肢として考えることすら避けてしまう方が多い部分です。ですが、介護者が倒れてしまっては共倒れになってしまいます。
施設入所という選択肢を考えるときの判断基準

離職か、在宅継続か、施設入所か。私が現場でご家族にお伝えしている判断基準は、主に次の4つです。
1つ目は、本人の状態の見通しです。認知症の進行や看取りが近い時期など、今後さらに介護の負担が重くなることが見込まれる場合、在宅サービスの拡充だけでは限界が来るタイミングを想定しておく必要があります。
2つ目は、経済的な持続可能性です。離職による収入減と、施設利用料を比較したとき、どちらが長期的に家計を維持できるか。目先の費用だけでなく、離職後の再就職のしやすさ(特に年齢的な要素)まで含めて考える必要があります。
3つ目は、介護者自身の心身の状態です。睡眠不足や体調不良が続いている場合、それはすでに「限界のサイン」です。本人のためにと無理を続けた結果、介護者自身が倒れてしまう共倒れのケースを、現場では何度も見てきました。
4つ目は、本人の希望です。住み慣れた自宅で過ごしたいのか、専門的なケアを受けられる環境を望むのか。本人の意思を丁寧に確認するプロセスは、施設選び全体に共通して大切なポイントです。
まとめ

介護離職は、一度決断すると取り戻すのが難しい選択です。93日の介護休業期間は、辞める前提の準備期間ではなく、「辞めなくて済む体制を整えるための期間」として使ってみてください。ケアマネジャーに相談すれば、ケアプランの見直しや施設入所の検討も含めて、一緒に整理することができます。一人で抱え込まず、まずは相談することから始めてみてください。
この記事を書いた人:ケアマネジャー歴20年・FP3級。居宅介護支援事業所で、日々ご家族の相談を受けています。
🫶 ゆるっとケア日和|腸活×介護×FPのヒント帳 今日も、あなたと大切な人の”ごきげんな日”が少し増えますように。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。介護サービスの利用や制度の適用については、お住まいの自治体や担当の専門職へご相談ください。


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