はじめに:介護のお金、払いすぎていませんか?
介護が始まると、病院代、薬代、そして介護サービス代…。出ていくお金の多さに、ため息をついていませんか?
「こんなに負担しているのに、少しも戻ってこないの?」
そう思っているなら、もったいないかもしれません。
実はその介護費用、国の制度(医療費控除)で税金が戻ってくる可能性があります。
知らないだけで、毎年数万円を損しているかもしれません。
ここでは、難しく感じがちな制度を、介護家族の視点でやさしく解説します。
そもそも「医療費控除」って?
医療費控除とは、1年間(1月〜12月)に支払った医療費が一定額(原則10万円)を超えた場合、確定申告をすることで、所得税の一部が戻ってくる制度です。
ポイントは3つ
- 家族分も合算OK: 生計を一にする家族全員分をまとめられます。
- 誰が申告してもOK: 親の介護費用を子どもが払っている場合、子どもが申告できます。
- 申告が必要: 年末調整ではできません。自分で確定申告が必要です。
【図解】どの介護サービスが対象?(基本ルール)
介護費用は「なんでも対象」ではありません。
ここが一番ややこしいポイントです。
こまずはこの図で全体像をつかみまし

基本原則
- 医療系サービス(訪問看護、リハビリ、老健など)
- → 原則、対象です。医師の指示に基づく医療的なケアだからです。
- 生活支援系サービス(デイサービス、訪問介護など)
- → 原則、対象外です。生活のお世話が中心だからです。
【超重要】例外的に「対象」になるケース
ここが「損しない」ための最大のポイントです。 上記の図の黄色い部分のように、「医療系サービス」と同じ月にセットで利用している場合、本来は対象外のデイサービスや訪問介護の費用も、まとめて対象になる可能性があります。
判断のカギは「医師の指示に基づくケアプラン」
- 単に「家事が大変だから」ではなく
- 主治医が「治療・療養のために必要」と判断し
- その内容がケアマネジャー作成のケアプランに反映されている
この状態であることが重要です。
※サービスの種類(身体介護か生活援助か)ではなく、療養との関係性が判断基準になります。
【実践】あなたの場合はどうなる?判定フローチャート
「私のケースは対象になるの?」と迷ったら、このチャートをたどってみてください。

※このチャートは目安です。最終判断は、ケアプランの内容・領収書の記載・税務署の判断によります。
【施設編】特養・老健・有料ホームに入っている場合は?
「施設に入ったら、もう関係ない?」と思っていませんか? 実は、施設に入居していても医療費控除の対象になることがあります。ただし、施設の種類によってルールが全く違います。

① 老健(介護老人保健施設)など
👉 支払った自己負担額の「原則全額」が対象! 医療ケアが中心の施設なので、施設サービス費、食費、居住費などが幅広く対象になります。
② 特養(特別養護老人ホーム)
👉 支払った自己負担額の「半分(1/2)」が対象! 生活の場ですが、医療との連携が強いため、特例で「支払った額の半分」が対象と認められています。(食費・居住費含む)
③ 有料老人ホーム、サ高住、グループホームなど
👉 基本は対象外。でも「医療系」利用分は対象! 施設への支払い(家賃など)は原則対象外ですが、「外部の病院代」や、施設内で利用した「訪問看護・リハビリ」などの医療系サービス費の自己負担分は対象になります。
【重要】領収書をチェック! 施設の領収書に**「医療費控除対象額」**という欄があり、そこに金額が記載されていることが多いです。その金額が申告できます。
見落としがち!「おむつ代」も対象になるかも
意外と知られていませんが、紙おむつ代も条件を満たせば医療費控除の対象になります。
対象になる条件(必須)
- 医師が「治療上、おむつの使用が必要」と認めていること
(寝たきり・排泄に常時介助が必要など) - 証明書類があること
証明書の種類
- 【初めての年】医師が作成する「おむつ使用証明書」
- 【2年目以降】市区町村が発行する「確認書」
※要介護認定の内容により可否が分かれます
※レシートだけでは申告できないので注意しましょう。。
まとめ:損しないための3ステップアクション
制度は少し複雑ですが、やるべきことはシンプルです。この3つだけは忘れないでください。

- 領収書は「全部」残す: 判断は後でいいので、介護・医療関係の書類は専用の箱にとりあえず全て保管しましょう。
- 自分で確認・計算する: 役所から届く「医療費のお知らせ」には、介護費用が載っていないことが多いです。必ず自分で領収書を集計してください。
- 必ず確定申告をする: 医療費控除は、申告しなければ1円も戻りません。
「うちはどうかな?」と迷ったら、まずはケアマネジャーさんに相談したり、領収書の備考欄を確認してみることから始めましょう。知っているだけで、家計の負担が軽くなるかもしれません。


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