「まだ大丈夫」で我慢しなくていい。福祉用具で暮らしがラクになる理由

介護保険サービス

「まだ手すりなんて早い」「杖を使うのは負けた気がする」

ケアマネジャーとして20年、たくさんのご本人・ご家族からこんな言葉を聞いてきました。

でも実際に福祉用具を取り入れたご家庭のほとんどが、こう言います。

「もっと早く使えばよかった」

今回は、福祉用具がなぜ生活を変えるのか、そしてどう選べばいいのかを、ケアマネジャーの視点からお伝えします。

福祉用具は「介護の道具」ではなく「自立の道具」

福祉用具というと「介護が必要な人が使うもの」というイメージを持たれがちです。

でも実際の役割は逆で、**「できることを、できるうちに、できるだけ自分の力で続けるための道具」**です。

  • 手すりがあれば、一人でトイレに行ける
  • 歩行器があれば、一人で近所を歩ける
  • 段差解消スロープがあれば、一人で外出できる

「介助してもらう」から「自分でできる」に変わる。これが福祉用具の一番の価値です。そして、ご本人ができることが増えれば、それだけ介護するご家族の負担も減っていきます。

介護保険でレンタルできる福祉用具、こんなにあります

介護保険を使うと、福祉用具の多くを原則1割負担でレンタルできます(所得に応じて2〜3割)。要介護度によってレンタルできる品目は変わりますが、代表的なものはこちらです。

  • 手すり:置き型・突っ張り型など、工事不要のものも
  • 歩行器・歩行補助杖:屋内用、屋外用、様々なタイプ
  • 車いす:自走用、介助用、電動タイプも(要介護2以上が原則)
  • 特殊寝台(介護用ベッド):背上げ・高さ調整ができるもの(要介護2以上が原則)
  • 床ずれ防止用具:エアマットなど
  • 手すり・スロープ:段差解消のためのもの
  • 認知症老人徘徊感知機器:離床や外出を知らせるセンサー

要支援1・2や要介護1の方は、原則としてレンタルできる品目が限定されますが、心身の状態によっては例外的に利用できる場合もあります。「うちは軽度だから使えないかな」と諦めず、まずはケアマネジャーに相談してみてください。

購入が必要なもの、レンタルできないものもあります

衛生上の理由から、レンタルではなく**購入(特定福祉用具販売)**が必要なものもあります。

  • ポータブルトイレ
  • 入浴補助用具(シャワーチェア、浴槽用手すりなど)
  • 簡易浴槽

こちらは年間10万円を上限に、費用の1割(所得に応じて2〜3割)負担で購入できる制度があります。上限額を超えなければ、複数の用具を組み合わせて購入することも可能です。

住宅改修で「住み慣れた家」をもっと安全に

福祉用具と合わせて知っておきたいのが「住宅改修費の支給」です。

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 滑りにくい床材への変更
  • 引き戸への取り替え
  • 洋式便器への取り替え

これらの小規模な改修に対して、上限20万円まで、費用の1割(所得に応じて2〜3割)が支給されます(上限額の範囲内で複数回に分けて利用することも可能)。

ポイントは、工事の前に申請が必要ということです。先に工事をしてしまうと支給の対象外になってしまうため、「ここに手すりをつけたいな」と思ったら、まず担当のケアマネジャーに相談するのが鉄則です。

こんな「困りごと」、福祉用具で解決できるかもしれません

現場でよく聞く困りごとと、対応できる福祉用具の例をいくつかご紹介します。

  • 「トイレに行くのがしんどそう」→ トイレ用手すり、ポータブルトイレの検討
  • 「お風呂の出入りが怖い」→ 浴槽用手すり、シャワーチェア、すのこでの段差解消
  • 「ベッドから起き上がるのが大変」→ 特殊寝台、起き上がり補助用の手すり
  • 「玄関の段差でつまずく」→ 段差解消スロープ、上がりかまち用の手すり
  • 「夜間、トイレに行く際にふらつく」→ 足元を照らすセンサーライト、起き上がり用手すり

「これくらい大丈夫」と我慢を重ねているうちに転倒し、それがきっかけで介護度が重くなってしまうケースを、現場で何度も見てきました。「困ったら早めに相談する」ことが、結果的に一番の予防になります。

福祉用具専門相談員との連携も大切に

福祉用具のレンタル・購入の際には、「福祉用具専門相談員」という専門職が、ご本人の身体状況やお住まいの環境に合わせて選定・調整をしてくれます。

ケアマネジャーが全体のケアプランを組み立て、福祉用具専門相談員が実際の用具選びと調整を担当する、というのが一般的な連携の形です。

「なんとなく良さそうだから」で選んでしまうと、かえって危険な場合もあります。 例えば、歩行状態に合っていない杖や歩行器は、転倒リスクをかえって高めてしまうことも。必ず専門職と相談しながら選ぶようにしてください。

まとめ:福祉用具は「我慢しないための選択肢」

福祉用具を使うことに、引け目を感じる必要はまったくありません。

  • 手すり一本で、一人でできることが増える
  • 適切な用具で、転倒などのリスクを減らせる
  • ご本人の自立と、ご家族の負担軽減、両方につながる

「まだ早い」ではなく、「今、困っていることはないか」という視点で考えてみてください。

福祉用具について気になることがあれば、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに、遠慮なく相談してくださいね。


この記事は一般的な情報提供を目的としています。要介護度や心身の状態によって利用できる福祉用具や制度の内容は異なります。詳細はお住まいの市区町村や担当のケアマネジャーにご確認ください。

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